19世紀にシオニズム運動が始まったとき、国家建設の地は、必ずしもパレスチナを想定していたわけではなかったようです。しかしながら、やがて、旧約聖書にも記されたカナンの地こそ、ユダヤ人の国家にはふさわしいという結論に至ることになるのです。
そうして、古代にあって、この地にユダヤ人の国家が存在していたことは、国家建設の大きな根拠となりました。現在でも、イエルサレムには、破壊されたユダヤ教の神殿の跡が、”嘆きの壁”として残っています。ユダヤ人の国家が遠い過去に存在したという歴史的な事実は、ユダヤ人によるイスラエル建国を支える根拠ともなったのです。
このことは、ある民族がある民族の土地を征服して追い出してしまった、というパターンと、パレスチナ問題とは、いささか事情が違うことを意味しています。それは、過去において追い出されたのは、ユダヤ人の方であったからです。つまり、現代と過去とでは、立場が逆転している可能性があるのです。
歴史が重層的に積み重なっているところで国境線を引くのは大変なことなのね、とまあちゃまは、この問題の難しさを痛感するのでした。