ハマスの基本的な路線は、PLO主導の和平路線に反対し、かつ、イスラエルともあらゆる手段を用いて、徹底的に戦う、とするものでした。
この目的のためには、自爆テロをも容認していたため、いたく、イスラエルの反発を買うことにもなりました。ついに、イスラエル軍は、テロ活動を抑えるために、軍事行動に及ぶことになるのです。この結果、２００４年３月２２日に、ハマスの創始者であったヤシン師が、モスクでの礼拝からの帰途に、イスラエル軍のヘリ攻撃によって暗殺されることになりました。次いで、ヤシン師の後継者も暗殺されるのです。
とうとうテロと軍事的報復の連鎖となってしまったようね、とまあちゃまは、眉をひそめます。
それでは、ハマスという組織は、どのような組織なのでしょうか。
ハマスは、独立した組織ではなく、エジプトで設立されたムスリム同胞団とイスラム・ジハードのパレスチナ支部とした発足しました。この設立には、サウジアラビアとイランが資金援助をしたと言いますが、宗派としては、両国とは異なるスンニ派です。もともとは、イスラム教徒による相互扶助を目的としていましたので、医療、福祉、教育などに熱心に取り組んでいたようです。しかしながら、それは表向きであって、実のところ、イサディン・アル・カサム軍団という武装闘争部門を擁していたのです。この武装組織こそ、テロ活動の母体となるのです。
ハマスの活動は、パレスチナの分裂への方向へと向かいそうね、とまあちゃまは、思うのでした。
イスラエルの国内情勢を見ますと、右派リクードと現実路線派の労働党との間に政権争いがあるのですが、パレスチナ側にも、深刻な内部対立がありました。そうして、それは、ヨルダン川西岸地区とガザ地区との間の亀裂にもなったのです。
その切っ掛けは、ガザ地区において、ハマスという組織が誕生したことです。インティファーダ以来、イスラエルの抵抗運動は、特にガザ地区で活発であったのですが、従来のPLOの和平路線に対する反対勢力が育つ土壌が、ガザ地区にはありました。そうして、１９８７年１２月１４日に、アフマド・ヤシン師によって、イスラム抵抗運動という名の組織が発足するのです。この組織は、ハマスという名称で知られています。
パレスチナ側も、何か、分裂しそうな雲行きになってきたのね、とまあちゃまは、心配そうです。
イスラエルが、ヨルダン川西岸地区に建設した分離壁とフェンスに対しては、国際社会でも、非難が高まることになります。
2003年10月21日には、国連の臨時特別総会で、賛成１４４カ国の多数で、非難決議が採択されました。ただし、安保理における国際法違反の認定については、アメリカが拒否権を発動したために、成立しませんでした。翌2004年７月９日にも、国際司法裁判所において、撤去勧告が出されました。こうして、一方的なイスラエルの措置に対して、国際社会の非難は高まる結果となったのです。
確かに、イスラエルの行動は、どう見ても、二国併存を実現するには酷過ぎるわ、とまあちゃまは、残念に思うのでした。
イスラエルによる占領地における分離壁の建設は、パレスチナ側のテロ攻撃を防ぐ、ということが名目でした。しかしながら、もうひとつ、イスラエル側には目的があったとも指摘されています。
それは、良好な水資源の確保です。中東一帯は、乾燥地帯であって、水資源は限られています。水利を確保しませんと、農業や生活を営むのに困ることになるのです。そこで、水利争いは、昔から頻繁に起きてきたことなのですが、ここにきて、イスラエルは、分離壁の建設にかこつけて、パレスチナ側の水資源を囲い込んでしまったのです。
これでは、両者の間の紛争が、もっとひどくなりそうだわ、とまあちゃまは、心配でたまりません。
リクード政権が推進した占領地入植政策は、あとあと問題を残すことになったのですが、和平進展のさらなる障害となったのは、イスラエルによる分離壁の建設でした。
インティファーダ以来、パレスチナ側からのテロ攻撃に対して、イスラエルは、有効な政策をとれないでいました。そうして、このテロ対策を名目として進められたのが、占領地入植地を高い防御壁で囲むという政策でした。つまり、パレスチナ側との間に分離壁を築くことによって、イスラエルは、自爆テロといった無差別攻撃から自らを守ろうとしたのです。
占領地では、どんどん既成事実化が進行していったのね、とまあちゃまは、驚くのでした。
そうして、翌年の２００３年４月には、中東和平にとって画期的な進展が見られました。それは、アメリカ、EU、ロシア、国連による中東和平ロードマップの作成です。
このロードマップには、２００５年までにパレスチナ国家を樹立すること、２００１年３月以降にイスラエルが建設した入植地を撤去すること、そうして、入植活動自体を凍結することが定められました。こうして、少なくとも、国際レベルでは、二国経併存に向けてのプロジェクトが再び動き始めたのです。
このまま順調に、二国併存が実現するのかしら、とまあちゃまは、少しばかり心配です。
こうして、中東和平は停滞気味になるのですが、ここで、新たな展開が生じてきます。それは、サウジアラビアのアブドラ皇太子の提案です。
２００２年２月、アブドラ皇太子は、イスラエルに対して、もし、全占領地からイスラエル軍が撤退すれば、国家承認の準備があることを伝えるのです。そうして、２０００年にアメリカ大統領に就任したブッシュ大統領も、６月に、パレスチナ暫定国家の建設支援を表明するのです。こうして、中東和平に、僅かなりとも希望が見えてくることになりました。
このまま、事態は良い方向に向かうのかしら、とまあちゃまは、心配そうに行方を見守ります。
２０００年９月のイスラエルとパレスチナの大規模な衝突によって、オスロ合意の枠組みがほとんど機能しなくなったのですが、その後、中東和平の再構築が試みられました。
まずは、アメリカ政府は、事態の調査に乗り出します。この調査結果は、２００１年５月にミッチェル報告書として提出されることになりました。そうして、このミッチェル報告書に基づいて、同年６月にテネット計画が策定されることになるのです。しかしながら、シャロン政権誕生と言うこともあって、中東和平には表立った進展はありませんでした。
これからどうなるのかしら、とまあちゃまは、次なる展開に関心を寄せるのでした。
シャロン首相が残したもう一つの負の遺産は、ヨルダン川西岸地区におけるユダヤ人入植地です。
左派のリクードの立場にあっては、パレスチナ全域が、神に約束されたユダヤ人と土地となります。そこで、シャロン首相は、建設相の時代から、占領地におけるユダヤ人の入植活動を積極的に進めたのです。特に、旧ソ連邦からイスラエルに移住してきた人々が対象となり、約２０万人の人々が占領地に居住することになりました。
これでは、国境の線引きが難しくなるし、イスラエル軍の撤退にも影響が出てきそうだし、大変面倒なことになりそうね、とまあちゃあは、心配です。
