それでは、悪って何なのでしょうか?おそらく、自分の欲や利益のために人を”犠牲”にする行為を”悪”と呼ぶのでしょう。でも、自分の欲や利益を追い求めること自体が、”悪”と即座に認定されるわけでもなさそうです。
もし、そうならば、良い人間になろうという欲も悪になってしまいますし、何よりも、人間関係が成り立たなくなってしまいます。おなじ欲であっても、自分自身を鍛えたり、自分自身だけでなく相手にも利益をもたらすような欲は、悪としてきめつけることはできそうにないのです。
例えば、人類の生存にとっても大事な市場経済も、こうした相互利益の成立に基づく人間の活動です。しかしながら、歴史を振り返りますと、個人の利己心が社会的な利益をもたらすことを主張したマンデヴィル(1670~1733年)の「蜂の寓話」が道徳的な批判にさらされたように、経済的利益と道徳との間に折り合いをつけることは、本来、とても難しいことではあったのです。
欲にも、許される欲と許されない欲とがあるのね、とまあちゃまは、欲の良し悪しについても区別してみることにしました。