ところで、このように人類史を振り返って見てみますと、現在、中東情勢が混乱し、なかなか解決の糸口を掴めない理由がよくわかります。
第1に、古代から帝国が興亡を繰り返したために、国家並列型の国民国家体系との親和性が極めて低いことです。このため、どの国も、チャンスさえあれば、帝国型の国家を目指す傾向にあります。第2に、帝国のタイプにもイスラム教を軸とした宗教型があり、今日でも、国境を超えた連帯感を保っていることです。そうして、第3に、ユダヤ人は、イスラエルを建国したものの、宗教および民族の両面において、他の中東諸国との共通点が少ないことです。今日のユダヤ人は、古代とは違って、民族というよりもユダヤ教を信じる人々の集団であって、スファラディー系のようにハザラ王国の末裔(中東欧系)も混ざっています。また、ユダヤ教は、選民意識が強く、排他的であるという特徴をもつことも、宗教的対立の要因と言えましょう。最後に第4として、クルド人のように、いまだに国家を持てない民族も残っているということです。
解決が難しい紛争には、幾重にも重なった歴史的な背景があるのね、と、まあちゃまは、どうしたら、このこんがらがった紛争の糸を解きほぐすことができるのかと思案するのでした。
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