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「ちゃぽ殿。ちょうどよい時にまいられた。困っておったところなのじゃ。ちゃぽ殿は、後の世からまいったというではないか。それでは、もっと、昔の世にも行くことができるのではあるまいか。」
「はい。ちゃぽ。」(やっと、ちゃぽちゃんは、「はい」とお返事ができるようになりました)
「ちゃぽ殿。ひとつ頼みがござる。今を去ること300年ほど前、聖徳太子と申すものがおられた。ひとつ、聖徳太子に会ってきてはくれまいか。」
「えっ。ちゃぽ。」
ちゃぽちゃんは、朝堂院で、三善清之さんを発見しました。
「ちゃぽー。もしもし。おそれいりますが、三善清之さんではありませんか。」
ちゃぽちゃんは、おそるおそる話しかけてみました。
「そうでおじゃるが。拙者は、忙しいのじゃ。ほっといてくれまいか。」
「あのう。ちょっと、お話が…」
「何度言ったらわかるのじゃ。話しかけないでくれたまえ。拙者は、「勘文」を書いているところなのじゃ。」
「あのう。ちゃぽと申します。後の世からやってまいりました。」
「なにっ。おおー。そなたが、後の世からやってまいったという評判のちゃぽ殿でおじゃるか。ちょうどよいところにまいった。」
ちゃぽちゃんは、大内裏の朝堂院にやってきました。
「わー。とても立派な門だなあ。ちゃぽー。」
ちゃぽちゃんは、朝堂院の応天門を見てびっくりです。応天門は、朝堂院の正門です。貞観八(866)年に、応天門の変として有名な火災で焼けてしまいましたが、立派に再建されていました。
「このなかで、三善清之さんは、お仕事しているんだ。」
ちゃぽちゃんは、どきどきです。
「あれっ。そういえば、積木がある。」
よくよく見てみますと、几帳のまわりには、積木がいっぱいあります。
「ちゃぽちゃん。何か忘れていませんか。」
「あっ。ちゃぽ忘れてた。」
「ちゃぽちゃん。遊んでばかりいませんでしたか。」
「えへ。ちゃぽ。三善清之さんのところにいって、讖緯暦運説について聞いてくるんだった。」
「ちゃぽちゃん。やっと、思い出したわね。」
「うん。ちゃぽ。ちゃぽ。いってきまーす。でも、どこにゆけば、三善清之さんに会えるんだろう。」
「ちゃぽちゃん。大内裏の朝堂院にゆけば、三善清之さんはいるかもしれませんよ。」
「うん。ちゃぽ。」
ちゃぽちゃんは、まいにちお呼ばれで楽しくてしょうがありません。
「わーい。わーい。ちゃぽ。たのしいなあ。」
ところが、ある日のことでした。
まあちゃまの御家の几帳のむこうに、なにやら誰かがいるようです。
「あれ。ちゃぽ。誰かがいるみたい。誰かなあ。」
すると、几帳のむこうから声がありました。
「わらわは、ゆうちゃまと申します。まあちゃまの姉でござります。そなたは、ちゃぽちゃんですね。」
「うん。ちゃぽ。びっくり。」
「ちゃぽ殿。今日は、わらわの家に遊びに来てくだされ。」
「いやいや。わらわの家でござる。」
御所から帰ってきたちゃぽちゃんは、大人気です。ひっきりなしにまあちゃまのお家に、人々が押し寄せて、ちゃぽちゃんをご招待です。
「わらわの家では、ちゃぽ殿のために、特製平安ハンバーグをこしらえたでおじゃる。ぜひ、我が家へおこしくだされ。」
「なにを申しまするか。わらわの家では、ちゃぽ殿のために、御箏に、横笛、ひちきりで、「ちゃぽちゃんソング」をつくったでおじゃる。おもしろいでおじゃるぞ。ちゃぽ殿。ぜひ、我が家へおこしくだされ。」
「ちゃぽー。」
あらあら。ちゃぽちゃんは、たいやひらめの舞い踊りです。
「でも、みなさま、ご安心ください。日本国は、いまでは、立ち直って、世界第二位の経済大国になっておりまする。」
「おー。それは、まことか。」
「うれしきことじゃ。よきことじゃ。」
帝も公卿もおおよろこびです。
「ちゃぽちゃん。また、御所に遊びにきて、後の世の話でもしてくれ。朕は、たのしみじゃ。」
「うん。じゃなかった。はい、ちゃぽ。」
「ちゃぽちゃん。後の世には、どのような大きなでき事があったのかのう。」
「ええと。ええと。ちゃぽ。後の世には、外国(とつくに)との間に、大きな戦がございました。」
「えー。こはいかにしつることどもぞや。」
「おー。およよよよー。」
さあ、たいへん。居並ぶ公卿たちは大騒ぎです。
左大臣:「我が国と外国が大きな戦に。およよ。およよ。白村江の戦(はくそんこうのたたかい)以来のことではござりませぬか。およよよよー。」
帝:「泣くな。左大臣。」
公卿たちのなかには、泣き出す者までありました。帝が、いっしょうけんめい、公卿たちを慰めています。
「ちゃぽちゃん。よう、まいられた。」
帝は、おおよろこびです。
「うん。じゃなかった。はい。ちゃぽ。ちゃぽと申します。」
「ちゃぽちゃんは、後の世からやってきたというそうな。」
「うん。じゃなかった。はい。ちゃぽ。」
「それでは、ちゃぽちゃん。後の世の話をしてくれないか。朕は、後の世が、どのようになるのか心配なのじゃ。」
「うわー。すごいな。すごいな。」
ちゃぽちゃんは、御所の紫宸殿にやってきました。紫宸殿の立派さに、ちゃぽちゃんは、びっくりです。
ちゃぽちゃんは、御出掛するときに、「ちゃぽちゃん。お行儀よくするのよ。お返事は「うん」じゃなくて、「はい」よ。」と、まあちゃまが言っていたことを思い出しました。