ゆうちゃまの昔語り

ちゃぽちゃんお勉強しなくっちゃ

「ゆうちゃま。ゆうちゃま。日本書紀と古事記がどうして違うのか、その理由は、どうやったらわかるの？」

「それにはね。まず、日本書紀紀年法が、どのようなものであるのか、お勉強しなくちゃならないのよ。」

「例えば、どんなことをお勉強するの？」

「例えばね。日本書紀の編年には、どのような特徴があるのかを、お勉強して、覚えなくっちゃね。」

「ちゃぽ。たいへん。ちゃぽ。とってもお勉強しなくっちゃ。」

日本書紀紀年法のお勉強ってなあに？

「ゆうちゃま。ゆうちゃま。どうして、日本書紀と古事記は、こんなにもちがうの？」

「ちゃぽちゃんも不思議に思うでしょ。ゆうちゃまも、とっても不思議に思ったのよ。でも、それには、理由があるはずなのよ。」

「どんな理由かなあ。」

「その理由探しが、日本書紀紀年法の研究なのよ。」

「なるほど。ちゃぽ。どうしてお勉強しなくちゃいけないのかわかった。」

「そうよ。ちゃぽちゃん。日本書紀の年代と古事記の年代がなぜ、異なるのか、日本書紀紀年法のお勉強は、理由探しの旅みたいなものなのよ。」

「とても楽しそうな旅だね。ゆうちゃま。」

日本書紀と古事記の間で末年が異なる天皇たち

「ちゃぽ。仁徳天皇の末年が、日本書紀と古事記とでは、違っているなんて、とってもびっくり。」

「ちゃぽちゃん。仁徳天皇だけではないのよ。崇神天皇、成務天皇、仲哀天皇、応神天皇、履中天皇、反正天皇、允恭天皇、雄略天皇、継体天皇、敏達天皇も異なっているのよ。」

「へー。そんなにいっぱい違っているんだ。でも、古事記は、たしか編年体じゃないから、年代は出てこないと思ったけれども、どうして、これらの天皇の末年がわかったの？ゆうちゃま。」

「それはね、古事記の最古写本の真福寺本古事記というのに、分註として崩年が、干支紀年法で記されてあったからなのよ。」

「古事記にも、年代が記されている場合があるんだね。」

「そうよ。ちゃぽちゃん。」

同じ天皇でも末年が違う

「ゆうちゃま。ゆうちゃま。同じ天皇なのに末年が違うって、たとえば、だあれ？」

「たとえばね。仁徳天皇。日本書紀も古事記も仁徳天皇について扱っているでしょ。でもね、神武元年を紀元前６６０年、持統１１年を６９７年に位置づける日本書紀の編年のとおりに、仁徳天皇の末年を求めると、西暦３９９年、一方、古事記の崩年干支で求めると西暦４２７年になるのよ。」

「へえー。ちゃぽ、びっくり。ぜんぜん違うんだね。」

日本書紀と古事記では同じ天皇でも末年が違う

「ゆうちゃま。ゆうちゃま。日本書紀の編年をみんな信じなくなった理由には、他にどんなことがあるの。」

「ちゃぽちゃん。ほかにもいっぱい理由があるのよ。たとえば、日本書紀の他に、古事記という歴史書があるでしょ。日本書紀は神代から持統１１年まで、古事記は神代から推古天皇までを扱っているの。日本書紀と古事記とも、推古天皇までは、同じ時代を扱っていることになるから、両書で扱われている天皇も同じということになるでしょ。じゃあ。ちゃぽちゃん。日本書紀と古事記の同じ天皇の末年は同じだと思う？」

「同じ天皇を扱っているのなら、普通は、末年は同じだよね。」

「そうよね。普通は、同じでしょ。ところが、日本書紀と古事記では、同じ天皇でも末年がぜんぜん違うのよ。」

「ちゃぽ。びっくり」

「この続きは、明日ね。ちゃぽちゃん。」

「うん。ちゃぽ。」

どうして日本書紀の編年は信じてもらえないの？

「ちゃぽ。どうして、みんな、日本書紀の編年を信じなかったの？」

「それはね。ちゃぽちゃん。まずひとつの理由は、歴代天皇の在位年数が長すぎるのではないか、と、みんなが思ったことにあるの。例えば、孝安天皇は１０２年間在位されていたり、垂仁天皇は９９年間も在位されていたとされているのだけれども、とても、一代の天皇が、１０２年間や９９年間も在位されていたことが、本当のこととは、思えないでしょ。」

「そうだね。ちょっと長すぎるみたいだね。」

「１０２年や９９年という数字には、在位年数ではなくて、他の意味があるのだろうけれども、まずもって、一代の紀年数が多すぎる傾向にあることが、日本書紀の編年をみんなが信じなかった理由なのよ。」

「うん。ちゃぽわかった。他にも理由はあるの？ゆうちゃま。」

「他にも理由はあるわよ。それは、明日お話しするわね。」

日本書紀の紀年数はぜんぶで１３５７

「ゆうちゃま。日本書紀紀年法は、巻３の神武紀からはじまって、どの時代まで扱っているの？」

「神武紀で、神武即位元年を紀元前６６０年に位置づけて、巻末は持統１１年の６９７年なのよ。」

「ぜんぶで紀年数は、いくつなの？」

「ぜんぶで１３５７年よ。ちゃぽちゃん。」

「でも、神武元年の紀元前６６０年から持統１１年の６９７年までの１３５７年間を扱っていることが、わかっていたのなら、なぜ、日本書紀紀年法のことを、みんな、でたらめだって、言ってきたの？ちゃぽ不思議。」

「それね。ちゃぽちゃん。なぜ、日本書紀の編年が疑問視しされて、日本書紀紀年法という研究分野が形成されてきたのかを、お話しなくっちゃ、ちゃぽちゃんは、なぜ、お勉強しなくてはいけないのか、わからなくなっちゃうものね。」

神代紀と天皇紀

「ちゃぽちゃん。日本書紀ってね。神代紀という巻があるの。日本書紀紀年法はね、巻３の神武紀からはじまっているの。」

「えっ。巻１から紀年ははじまっていないの？」

「巻１と巻２の神代紀ではね。まだ、年代といった概念のなかった時代、神様たちの時代と考えられていた時代を扱っているのよ。巻３で、初代天皇の神武天皇が、紀元前６６０年に即位されて、その年から紀年が設定されているの。」

「ふううん。ちゃぽ、わかった。」

空位年・神功紀の紀年・称制年のまとめ

「じゃあ。ゆうちゃま。ちゃぽ、空位年と神功紀の紀年と称制年について、まとめてみるね。」

「はいはい。ちゃぽちゃん。」

「あのね。空位年が全部で１０年。神功紀の紀年が６９年。称制年が全部で９年でしょ。」

「そのとおりよ。ちゃぽちゃん。」

「じゃあ。日本書紀は、天皇の紀年と、空位年と、神功紀の紀年と、称制の紀年からなっているから、これで、日本書紀は、ばっちりだね。」

「でもね。ちゃぽちゃん。日本書紀紀年法は、これらの紀年で成り立っているのだけれども、日本書紀は、これですべてではないのよ。」

「えーっ！どうして。」

「じゃあ。明日、お話してあげるわね。」

「うん。楽しみ。ちゃぽ。」

どうして称制ってあるの？

「ゆうちゃま。ちゃぽは、天智天皇と持統天皇に称制があるってわかったけれど、でも、どうして、称制ってあるの？」

「そうよね。ちゃぽちゃん。空位年でもなければ、天皇の紀年でもないのですもの。」

「日本書紀には、理由は書いてあるの？」

「それがね。何も書いてないのよ。天智天皇の場合は、天智７年に即位されたとあって、持統天皇の場合も持統４年に即位されたという記述が見えるだけなのよ。」

「ちゃぽ。とっても不思議。」

「ゆうちゃまも不思議に思っているのよ。ゆうちゃまも、いくつか仮説を考えているのだけれど、まだまだ、研究の必要があるの。でもでも、その不思議を解明してゆくことは、とっても楽しいことよ。」

「ちゃぽも、研究してみたいな。」

「そうね。でも、それには、ちゃんと紀年法のお勉強をしなくちゃね。」

「うん。ちゃぽ。しっかり勉強する。」